福井産業保健総合支援センター|独立行政法人 労働者健康安全機構

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福井産業保健調査研究報告書

平成12年度 福井県における産業保健実態調査

福井県における産業保健実態調査

主任研究者 福井産業保健推進センター所長  中上光雄
共同研究者 福井産業保健推進センター相談員 瀬尾明彦
共同研究者 福井産業保健推進センター相談員 小林眞次

1.調査目的

福井産業保健推進センター(以下、センター)の新設に伴い、その活動方針を決める基礎資料を得る目的で、県内の産業医と事業場を対象に、産業保健活動の実態とセンターへのニーズ調査を行った。

2.調査対象と方法

対象は、日本医師会認定産業医268人と、常時50人以上の労働者を雇用する事業場813カ所とし、それぞれに郵送法でアンケート調査を行った。

3.結果

1)回収率

アンケートの回収率は、産業医が72.4%(194人)、事業場が61.0%(496カ所)であった。

2)産業医調査の結果

(1)産業保健活動の実態:回答者のうち、現在事業場で産業医をしている人は113人(58%)であった。その勤務先の事業場については、従業員100人未満が47.8%、製造業が55.8%、何らかの有害要因のあるところが85.8%であった。そこでの主な産業保健活動(図1)は、「健診の事後措置」(77.9%)、「職場巡視」(61.1%)、「保健指導・健康相談」(49.6%)などであった。活動上の今後の重点課題(図2)としては、「生活習慣病」(38.1%)や「メンタルヘルス」(25.7%)があがっていた。「メンタルヘルス」は、現状よりも今後の課題としての注目度が高かった。

(2)センターへの要望:窓口相談(図3)と実地相談(図4)は「メンタルヘルス」と「有害業務の生体影響」や「職場巡視」、研修会(図5)は「職場巡視」と「メンタルヘルス」への対応を希望する人が多かった。研修会の開催日は「日曜・祝日」の希望者が38.7%と最も多かった。調査事業(図6)では、「健診と事後措置」(45.4%)や「メンタルヘルス」(43.8%)についての調査希望が高かった。情報提供については、「ビデオ貸し出し」(55.7%)や「書籍貸し出し」(39.2%)など現状のサービスの希望はいずれも高かった。センター活用上の留意点(図7)としては、「迅速なこと」(31.4%)が特に高かった。

3)事業場調査の結果

(1)産業保健活動の実態:回答のあった事業場は、従業員100人未満のところが56.3%、製造業が 42.5%、何らかの有害業務を持つ事業所の割合は 67.0%であった。産業保健活動は衛生管理者(63.9%)と産業医(50.2%)が中心に推進しており、その内容としては図8に示すように、「健康診断」(86.3%)、「健診の事後措置」(50.6%)、「職場巡視」(48.6%)などであった。今後の活動上の重点課題(図9)は、「生活習慣病」(28.4%)や「快適職場づくり」(25.0%)などが指摘されていた。なお、従業員数が200人以上の職場では、「生活習慣病」よりも「メンタルヘルス」を重点課題とする割合が高かった。

(2)センターへの要望:図10~図12に示すように、窓口相談・実地相談・研修会については、「快適職場づくり」や「労務管理」などについての対応希望が高かった。ただし希望割合は、いずれも産業医のほぼ半分と低かった。研修会の開催日については産業医と異なり、「平日昼間」の希望が66.5%と最も高かった。調査事業(図13)については、「職場改善活動」(29.2%)や「健診と事後措置」(28.0%)についての希望が高かった。情報提供については、「ビデオ貸し出し」(47.0%)が最も高く、特に従業員数が多い事業場ほど書籍や機器貸し出しも含めた多彩な提供を希望する傾向が認められた。センター活用上の留意点(図14)は、「迅速なこと」(31.9%)が最も重視されていたが、従業員数が少ない事業場では無料であること、従業員数が多い事業場では匿名性や情報の漏れがないことなどを重視する傾向も見られた。

4.考察

1)産業保健活動の現状

今回の対象となった産業医や事業場は、いずれも積極的に産業保健活を進めていることが確認された。ただ、その内容については事業場では規模による差が明らかで、従業員数100人未満のところでは基本的なレベルを満たすのに苦心しているのに対し、200人以上のやや大きな事業場ではより多彩な事業の展開を望んでいることがわかった。センターとしては、このような多様性に配慮し、対象を明確にした事業を展開する必要があると思われた。

2)センターの活動促進のためにすべきこと

(1)窓口相談、実地相談研修会:産業医も事業場もほぼ全ての領域で希望があった。産業医や従業員数の多い事業場ではメンタルヘルスなど時流にのった課題の希望が高かったが、従業員数が少ない事業場では、快適職場づくりや労務管理など、基本的な課題への対応希望が高かった。いずれにしても、当センターの15人の相談員がカバーしている分野のいずれもが必要であることが再確認された。なお、研修会に比べると相談業務、特に実地相談の希望者は産業医も事業場も5~10%と非常に少なかった。これは、実地相談というサービス自体がこれまでなかった全く新しい形態のサービスであることや、部外者が会社内に入ることに対する抵抗感が関係していると思われる。実地相談は、研修会より個別的で、窓口相談よりも具体的な改善策が検討できる良いシステムである。今後、様々な機会をとらえてその内容を知って頂き、利用拡大につなげたい。

(2)研修会:研修会も窓口相談等と同様、広い分野のテーマが望まれていた。しかし産業医に限ると「職場巡視」の希望が特に高く、そのうち現在産業医をしていない人に限ると「健康診断の実際」や「事後措置の方法」など、医師に専従的に要望される可能性が高い基本業務ついての希望が高かった。従って産業医に対する研修会では、産業医研修会のように基礎研修と更新研修のように対象を分けた具体的な内容の研修会が望まれていることが判明した。開催希望日に関しては、産業医は「日曜祝日」、事業場は「平日昼間」が多いことから、対象に応じて開催日を決める必要がある。産業医に対しては、今後福井県医師会の産業医研修会等との連携を強め、日曜祝日開催も検討したい。

(3)情報提供:産業医・事業場いずれも最も望まれているのは、ビデオ貸し出しであった。今後もさらに種類を増やしてニーズに対応したい。また従業員数が少ない事業場での貸出希望が相対的に低かったことから、専門職でなくても活用できるような入門的な書籍や資料も今後重点的に整備し、活用されるようPRに努めたい。

(4)調査研究:産業医と事業場に共通する課題としては「健診と事後措置」の実態調査の希望が多く、産業医と大規模事業場に限れば「メンタルヘルス対策」の実態調査の希望が多かった。事業場としては、「職場改善活動」の実態調査の要求が事業場規模によらず高かった。これらを踏まえ当センターでは、今年度の調査研究を産業医・事業場双方の要求の高かった「健診の事後措置」に関して、県内の事業場の協力を得て調査を行うべく検討中である。

5.まとめ

今回の調査で、産業医と事業場の産業保健活動実態の一部が明らかになり、またセンターへのニーズもある程度把握できた。これまでセンターが行ってきた事業では研修会の開催日のようにニーズにうまく合致していない点や、実地相談のように広報自体にも問題がありそうな点、あるいは情報提供のようにニーズにはあっているがさらに細かい対応が必要な点なども明らかにできた。

今後、この結果を参考に、センターがより地元の産業保健活動のニーズに応えていけ

るよう、努力を続けたい。

最後に、本調査にご協力頂いた産業医と事業場の皆様および関係機関の方々に心より深謝いたします。

福井産業保健総合支援センター

〒910-0006 福井県福井市中央1-3-1 加藤ビル7階
TEL.0776-27-6395 FAX.0776-27-6397